🧩営業・総務・経理の「その人に聞かないと分からない」を、少しずつ減らす
「このお客様のことは、○○さんに聞かないと分からない」
「月末の経理処理は、△△さんが休むと少し心配」
「総務の細かな対応は、長く担当している人に任せきりになっている」
こうしたことは、多くの中小企業で起こっています。
経験豊富な社員がいることは、もちろん会社の大きな強みです。お客様の事情をよく知っている。
イレギュラーな出来事にも落ち着いて対応できる。過去の経緯を踏まえて、ちょうどよい判断ができる。
そんな存在に助けられている場面は少なくありません。
一方で、その知識や判断が本人の中だけにあると、異動や退職、急なお休みの際に、周りが困ってしまう
ことがあります。
そこで役立つのがAIです。AIはベテラン社員の代わりをするためのものではありません。
長年の経験を言葉にし、整理し、ほかの社員も使える形にするための「お手伝い役」と考えて下さい。
🪄属人化は、頼れる人がいるからこそ生まれる
属人化という言葉には、少しネガティブな印象があるかもしれません。ただ、実際には「頼れる人がいるから
こそ起こるものです。
営業では、担当者だけがお客様とのこれまでのやり取りや、提案のポイントを把握していることがあります。
総務では、規程に書かれていない細かな判断を、ベテラン社員が経験で補っていることがあります。
経理では、入金名義の違いや月次締めの差異に、過去の記憶をもとに対応していることもあるでしょう。
大切なのは、その知識を、その人だけのものにしないことです。
❓手順だけでなく、「なぜそうするのか」も残す
ノウハウを残すと聞くと、まずマニュアルを思い浮かべるかもしれません。
もちろん手順書は大切です。ただ、ベテラン社員の経験には、手順だけでは表しきれない部分があります。
たとえば営業なら、「このお客様には価格の話よりも、導入後にどう使えるかを丁寧に説明した方がよい」
と判断する場面があります。経理なら、「いつもと違う名義の入金だけれど、この取引先ではないか」と
気づく場面があります。総務なら、「規程どおりに進めるだけではなく、先に関係部署へ声をかけた方が
よさそうだ」と考える場面があります。
こうした判断を引き継ぐためには、次のようなことも残しておくと役立ちます。
- 何を確認して判断しているか
- どんなときに通常とは違う対応が必要になるか
- 迷った場合は、誰に何を確認すればよいか
🤖AIを使うと、ノウハウを残すハードルが下がる
「マニュアルを作ってください」と言われても、日々の仕事に追われる中ではなかなか進みません。
また、ベテラン社員にとっては当たり前のことほど、説明するのが難しいものです。
そこでAIを使います。
たとえば、業務の説明やインタビューを録音して文字起こしし、AIに要点をまとめてもらう方法があります。
「この順番で確認するのはなぜですか」
「新人がつまずきやすいところはどこですか」
「いつもと違う場合は、どう対応しますか」
と質問しながら話を聞くと、普段は言葉にしていない知識が少しずつ見えてきます。
その内容をもとに、AIに手順書、チェックリスト、よくある質問集、引き継ぎ資料の下書きを作ってもらいます。
ゼロから文章を書くよりも、下書きを見ながら「ここは違う」「このケースも加えよう」と直していく方が、
負担はぐっと軽くなります。
もちろん、AIがまとめた内容をそのまま使うのではなく、実務を知る社員が確認することが前提です。
AIは「たたき台を早く作る役」、最終的な確認は人が担う。この役割分担が大切です。
✨まずは、一つの業務から始めてみる
すべての業務を一度に整理しようとすると、途中で負担が大きくなってしまいます。
最初は、「この人が一週間いなくても、何とか回せるだろうか」と考えながら、一つだけ業務を選んで
みてください。
営業なら見積作成や商談後のフォロー、総務なら入退社の手続き、経理なら入金消込や請求書の発行などが
始めやすいでしょう。
進め方は、次の3ステップです。
- ベテラン社員が担っている業務を一つ決める
- 話を聞きながら、AIで手順や判断のポイントを整理する
- 後任者が実際に使い、足りない点を少しずつ加えていく
最初から完璧な資料を作る必要はありません。実際に使いながら資料を更新し、最新の状態を保つことが
大切です。
⚠️AIを使う際に、気をつけたいこと
AIを使うときは、情報の扱いに注意が必要です。
顧客情報や個人情報、未公開の財務情報などを入力してよいかどうかは、事前に社内でルールを決めて
おきましょう。
また、AIの回答には誤りが含まれることもあります。社外への回答や、会計・労務・法務に関わる内容は、
必ず担当者や専門家が確認する運用が欠かせません。
🌈経験を、次の世代へつなぐために
ベテラン社員のノウハウを残すことは、その人の価値を下げることではありません。
むしろ、長年積み重ねてきた経験を、会社全体で活かしていくための取り組みです。
「教えること」「残すこと」「後輩を育てること」も、会社にとって大切な仕事です。
AIをうまく使えば、そのための時間や手間を少し軽くできます。
まずは一つの業務から。ベテラン社員の経験を、個人の力にとどめず、会社の財産として次へとつないで
いきましょう。
